AIPPI・JAPAN 米国知財セミナー 「米国特許訴訟の最新情報」
当協会では、主要各国に事務所を持つジョーンズ・デイ法律事務所より、3名の米国特許弁護士をお迎えして掲題セミナーを開催し、最近の米国最高裁判所における判決や係属中の事件について、実務への影響を交えながら解説して頂きます。ご講演の内容は以下の通りです。
1.特許侵害訴訟における裁判地 -TC Heartlandとその後
講演者:浅地 正吾氏 (米国特許弁護士、東京事務所パートナー)
TC Heartland v. Kraft Foods Group Brands事件において、最高裁判所は、特許侵害訴訟事件の裁判地(土地管轄)についての判断基準を示しました。当該判決は、米国における特許訴訟の関係者に対し、大きな不安定要素をもたらしたといえます。本セッションでは、この最高裁判決及びその後の下級審判決を取り上げ、特にこの判決が、米国において特許侵害訴訟の被告となった日本企業に対して、いかなる影響を与えうるかという観点からお話いたします。
2.当事者系レビュー -最高裁による制度の見直し
講演者:David M. Maiorana氏 (米国特許弁護士、クリーブランド事務所パートナー)
2011年米国改正特許法(Leahy-Smith American Invents Act)により導入された当事者系レビューは、現在では米国における特許紛争において、戦略を左右するキーファクターとなっています。この当事者系レビューに関して、二つの重要事件が最高裁判所に係属し、注目を集めています。Oil States v. Lee事件では、当事者系レビューの規定が、陪審審理を伴わない合衆国憲法Article IIIに該当しない裁定機関によって私有財産権を消滅させるという理由で憲法に抵触するか、というきわめて重要な問題を取り上げています。一方、SAS Institute v. Lee事件では、特許庁審判部(PTAB)が当事者系レビューにおいて、申立人が提起した複数の対象クレームのうち、一部のクレームのみの有効性について最終決定書を発行することができるか、という点が争点となっています。このような最終決定書の発行は通常行われているものであり、判断の帰趨が実務に及ぼす影響は大きいといえます。本セッションでは、上記の二つの事件について最高裁判所の判断が実務にどのように影響するかについてお話いたします。
3.特許権の国際的消尽 -Impression Products v. Lexmark International
講演者:Maxwell A. Fox氏 (米国特許弁護士、東京事務所パートナー)
Impression Products v. Lexmark International 事件において、最高裁判所は、連邦巡回控訴裁判所の判断を覆し、(1)原告かつ特許権利者であるLexmarkが「リターンプログラム」を通じて米国内でトナーカートリッジを販売したことによりその特許権は消尽していること、及び(2)Lexmarkが米国外で販売し、被告のImpression Productsが米国外で取得して米国に輸入したカートリッジについて、米国外での許諾された販売が、米国内での譲渡と同様に米国特許法上のあらゆる権利を消尽させると判断しました。本セッションでは、最高裁判所の判断の内容を分析し、実務への指針についてお話いたします。